MuseScoreと Sinsy または NEUTRINO または Synthesizer V Studio Basic による「六段の調」の尺八・箏の口唱歌とその作成法


尺八のロツレチや、生田流などの箏譜の横に書かれている口唱歌を箏の主旋律で歌うボーカルシンセの声を作ります。
Windows, Mac共に無料ソフトのみを使います。
利用可能であれば、箏、尺八の学習、邦楽の学習、音楽学習、音楽教育、情報処理教育などに自由に活用下さい。
2023年2月現在 MuseScoreの最新版は、Ver.4ですが、不具合が多くVer.3がオススメです。Ver.4ではサウンドフォントが使えない等. 本ページとは別内容ですが、尺八のロツレチを振るプラグインもVer4には未対応です。

楽譜(下記でファイルを公開)中には速度指定を多数してありますが、四分音符=60 等の数字を変更することによって、好みの速度に変更して使うこともできます。
NEUTRINOによる口唱歌を追加しました。(2020.3)
Synthesizer V Studio Basicによる六段の出だし5小節の例を追加しました。その他修正しました。(2023.2)


作成手順の概要 (尺八と箏の口唱歌、歌でなく演奏音の作成の場合などを混在させていますので、必要な部分のみを使用下さい。)

1. 箏パートや尺八パートについて、MuseScoreで五線譜を作成します。(MIDIデータがある場合は、これを読み込んで五線譜とすることもできます。)2023.2時点でMuseScoreは、Ver3を使うことをオススメします。Ver4は不具合が多く報告されています。
下記に「六段の調」のMuseScoreファイルを置いてあります。(尺八の一尺八寸管用の音程、箏の 一絃=G4 としています。尺八との合奏でない場合は、一絃=D5、両者の音程差は、半音7つです。MuseScoreでは、楽譜の全てを選択してから上下の矢印キーで音程を移動するという操作で(調の変更をせずとも)問題ありません。)
◯作成例(歌詞も入力した箏と尺八のスコア) 最初の1小節はカウント用です。
 


2. 箏パートの箏演奏を作成する。(口唱歌のバックに箏を鳴らすため.)
MuseScoreで、箏パートをkoto.sf2のサウンドフォントを使って鳴らし、WAVファイルにエクスポートします。ここでは、サウンドフォントを変更して少しでまともな箏の音にしています。MuseScoreのサイトで公開されている、FluidR3 GM2-2.sf2 にも琴の音がありますが、あまりいい音ではありません。(他にも検索すれば和楽器のサウンドフォントは多種公開されています。)

3. 尺八パートの尺八演奏音を作成する。(口唱歌には必要ありません。)
MuseScoreで、尺八パートをFluidR3 GM2-2.sf2のサウンドフォントを使ってフルート音で鳴らし、WAVファイルにエクスポートします。(尺八用で適当なサウンドフォントが見当たらなかったので)

4. 尺八のロツレチの口唱歌を作成する。
尺八のパートの五線譜にロツレチの読みを歌詞として入力します。ひらがな、またはカタカナで、読みの通りに入力します。入力確定後、右矢印キー"→"2回で、次の音符の歌詞入力ができます。漢字は不可で、使用可能文字はSinsyのサイトに解説があります。(なお、ロツレチ譜作成のプラグインでの自動入力は使用できません。プラグインのプログラムから歌詞の操作は不可能なためです。ロツレチ譜のプラグインでは、"歌詞"でなく"譜表テキスト"欄に書き込んでいます。譜表テキストを歌わせることはできません。)
◯MuseScoreのパート譜機能で、スコアとリンクされた尺八パート譜を作成した例
 

5. 箏パートの口唱歌を作成する。
箏パートの入力されたファイルは、別に保存しておき、口唱歌入力用のみに用います。箏の和音で演奏している部分は、必要でない方の音符を消して単音にします。六段では一番低い音を残しました。(和音に歌詞を付けた部分があると、歌声への変換が正常に行われません。)
箏の縦譜の左側に記載されている”シャシャテン”などを五線譜の音符の下にひらがな、またはカタカナで入力します。入力確定後、右矢印キー"→"2回で、次の音符の歌詞入力ができます。
休符は省略しましたが、適当な音程で音符を追加し「ソレ」(生田流)、「イヤ」(山田流)などを入力することもできます。
◯口唱歌の書かれた箏譜の例
 
◯MuseScoreのパート譜機能で、スコアとリンクされた箏パート譜を作成した例
 

6. 口唱歌の歌声データの作成
Sinsyで一度に歌声に変換できる長さは5分以内と制限されています。六段の調は、約8分なので一度に変換できません。
MuseScoreで歌詞を入力して作成したファイルを箏または尺八の各パートごとに初段と2段、3段以降の2ファイルに分けて5分以内としました。
ファイルを2つ用意して、後半を削除して初段と二段、前半を削除して三段〜六段と、2つのファイルとしました。
このとき、後ろ側のファイルの最初の小節に速度指定が付いていることを確認します。(速度指定がないと最初の速度指定までの小節の演奏速度がデフォルトの速度となってしまい、後でミックスができなくなります。)
5以内に調整した各パート譜をMusicXML形式でエクスポートします。
現バージョンのMuseScoreでは、拡張子が、.musicxmlとなりますので、.xmlに変更します。

7. Sinsyサイトで歌声の作成。 このMusixXMLファイルをSinsyのWebページで歌声に変換します。
歌声を[謡子、香鈴、波音リツ]などから選択します。他のパラメータは、使用しませんでした。
ページ内の[選択]ボタンと[送信]ボタンを使用して変換します。
しばらくすると、変換結果が表示され、Webページ内で再生できるようになります。
[wav]の表示の右クリック等でファイルとしてダウンロードします。
◯Sinsyの操作例
 

8. 箏と2ファイルに分割されている歌声のミックス。
箏のみのWAVファイル1つと、尺八または箏の口唱歌のWAVファイル2つの計3ファイルをAudacityの画面上にドロップ等で開き、箏の音と口唱歌のタイミングを合わせ、音量のバランスを整え、ミックスして1つのステレオトラックにし、必要に応じて正規化してからMP3ファイル等に書き出します。(Audacityの操作法は省略しますが、時間軸方向の拡大/縮小、選択ツールと移動ツールを使い分け、トラックを固定して前後を削除、領域のマークなど.機能は豊富で、ショートカットキーを覚えると迅速に作業ができます。)
◯Audacityで箏パートのWAVファイルと、2つの口唱歌のWAVファイルをミックスした例
 


下記に公開したファイルでは、箏の調絃は、箏のみの場合は、一絃をD5とし、尺八との合奏ではG4としています。両者には半音7つ分の音程差があり、MuseScoreで音程を変更して用います。




上記の手順で作成したMP3ファイルとYoutubeビデオ



尺八の口唱歌(Sinsyの歌声を、初段と4段に謠子、2段と5段に香鈴、3段と6段にf00005jを使用)



2020.2 ニューラルネットを使って調教なしで自然な歌い方ができるNEUTRINOが(フリーウェアとして)公開されました。標準で、茜屋日海夏さん(あかねや ひみか,声優)をベースにした「東北きりたん」と、童謡など得意とする「謡子」の声が使用できます。作成するデータはSinsyと同様にMuseScoreで音符と歌詞を入力しMusicXML形式で書き出します。息継ぎ部分には五線譜中にブレスマークを入れます。休符があれば必要ありません。
約7分の六段の変換に、25分ほどかかりました(2016年頃のIntel iMacで)。これを2種類の声で繰り返して、さらに琴パートのMIDI演奏とミックスしてビデオ化しました。

NEUTRINO の"東北きりたん"と"謡子" の斉唱による六段の口唱歌







箏の口唱歌(全曲を謠子、香鈴、波音リツ、f00005jの4声でそれぞれ演奏)




Sinsyの歌声の中で、いわゆる邦楽向きと言える声の「謠子」
六段の調、箏の口唱歌 謠子と箏 上記Youtubeビデオと同じ
六段の調、箏の口唱歌 謠子のみ

「謠子」より低年齢の「香鈴」の声で、
六段の調、箏の口唱歌 香鈴と箏
六段の調、箏の口唱歌 香鈴のみ

よりボーカルシンセ的な「波音リツ」で(少々不安定)
六段の調、箏の口唱歌 波音リツと箏
六段の調、箏の口唱歌 波音リツのみ

まだ名前が付けられていない「f00005j」は「波音リツ」より安定しています。
六段の調、箏の口唱歌 f00005jと箏
六段の調、箏の口唱歌 f00005jのみ


演奏音のみ
尺八の音はフルートの音源で鳴らしています。

六段の調、箏&フルート(都山流)
六段の調、フルートのみ(都山流) 琴の練習用にでも

六段の調、箏&フルート(琴古流)
六段の調、フルートのみ(琴古流) 琴の練習用にでも
琴古流尺八の旋律は青木鈴慕氏の演奏を参考に作成しました。


演奏音のみ
箏のみ
六段の調、箏のみ(八寸管の音程) 尺八の練習用のカラオケとして使用できます。
六段の調、箏のみ(一寸管の音程) 箏だけの音で"鑑賞する"場合に。




MuseScoreのファイル



六段の調、箏の口唱歌と都山流尺八の口唱歌の歌詞付き(八寸管の音程)

六段の調、箏と都山流尺八(八寸管)
六段の調、箏と琴古流尺八(八寸管)

箏の後押し、引き色などの特殊奏法は省略しています。


上記ファイルの箏のみを一尺三寸用に音程を変えて、鼻笛で尺八パートを吹いてみた例です。




Synthesizer V Studio Basicでは、初音ミクなどと同じように、ピアノロール(縦が音程、横が時間)画面に横棒で音符を入力し、棒の上に歌詞を入力することで歌わせることができます。
MuseScoreで入力した音符は、MIDIデータとして書き出し、Synth Vで読み込むことができます。
使い方の概要は、Synth V 使い方の概要PDF
同画像は、


六段の箏譜の最初の5小節を入力したSynthVファイルは、Rokudan_SynthV_5barsOnly.svp
5小節を入力した様子は、

この5小節を歌わせたMP3ファイルはRokudan_SynthV_5bars.mp3
入力用のMIDIファイルは、RokudanKoto.mid


使用ソフトウェア
MuseScore 五線譜作成と歌詞の入力、WAVファイルの作成
Sinsy 歌声の作成、名古屋工業大学 徳田研究室
NEUTRINO SHACHIさん
Synthesizer V Studio Basic
必要に応じて
Audacity 音の編集
OpenShot Video Editor ビデオ編集
GIMP, Inkscape


Google Scholorで"口唱歌"等で検索すると、学校教育、音楽教育関連での研究成果が発表されているのがわかります。口唱歌自体を公開している例は、太鼓関連以外は非常に少ないようです。

口唱歌の概要を知るには、大阪市立大の優秀卒論賞の「箏の唱歌(しょうが)と音象徴の関係」野田優里花 がオススメです。
PDFはこのリンク内にあります。

「中学校音楽科における伝統音楽の学習に関する研究: 口唱歌を用いた箏の指導方法に着目して」 神木育穂 平成25年度 修士論文 兵庫教育大

「小学校音楽科における篠笛の学習(4):伝統音楽における「口唱歌」の意義と教育的効果について」 金井公美子 洗足論叢, 2018 洗足学園大学




Hiroshi Tachibana